教育施設としての動物園。天王寺動物園でグラントシマウマを観察する

先日、在籍する通信制大学のレポート課題の参考に、初めて大阪にある天王寺動物園を訪れた。関東生まれ関東育ちなので、思えば、関西の動物園に行くのは初めてだったかもしれない。

110年の歴史がある都会の動物園

大正4年に開園した天王寺動物園は、日本で3番目に古い歴史を持つ動物園である。しかし、その歴史は決して平坦ではなかった。明治時代の大阪博物場に端を発し、第二次世界大戦の大空襲を乗り越え、平成には来園者数の激減という危機を経験した。令和3年には全国の動物園で初めて独立行政法人化を実現し、新たなスタートを切った。

現在は「教育施設」としての使命をとても大切にしており、都会の中にありながら、11ヘクタールある敷地に足を踏み入れると、動物たちの自然な生息環境をできるだけ再現した生態展示が行われている。これは単に動物を見せるだけではなく、動物の野生の行動を引き出す展示手法だ。

シマウマがいるのはアフリカサバンナゾーンの大放牧場

面白い展示は各所にあったのだが、ここで取り上げるべきはやはり馬の仲間だろう。天王寺動物園にはグラントシマウマと野間馬がいる。シマウマはロバに近く、野間馬のほうが馬らしいウマではあるのだが、野間馬の話はいつか愛媛の「のまうまハイランド」に行ったときのためにとっておこうと思う。

天王寺動物園のグラントシマウマは「アフリカサバンナゾーン」の大放牧場で会うことができた。大放牧場は園内で最も面積が大きい展示スペースだ。広い敷地にキリン、シマウマなどの草食動物が一緒に展示されており、開放感溢れる空間設計となっている。

大放牧場を眺めることができる位置にある、岩を模したベンチには、サバンナの風?を感じながら、スーツ姿でノートパソコンを開き、何やら仕事をしている女性がいた。一体なんの仕事をしているのか気になった。

本物のアフリカサバンナでは、さまざまな草食動物が同じ環境で生活している。天王寺動物園では、この自然な共存関係を再現するよう努めており、動物同士の関係性などを(なんとなく)肌で感じることができた。

雨季のサバンナのように草が一帯に生えているため、動物たちは決まった時間に餌を与えられるのではなく、野生に近い形で放牧中ずっと採食行動をとることができる。これは生態展示というほかに、動物たちの健康にとても良い。

生態展示は人間が本来の動物の姿を観察しやすくするのと同時に、動物福祉の面でもプラスになることが多そうだ*1

また来園者が歩く通路も、自然の中に作られた遊歩道のような設計で、動物の世界への没入感がなかなかに良い感じである。

グラントシマウマはお腹の下まで縞々である

シマウマにはあまり明るくないが、大きくわけるとサバンナシマウマ、グレービーシマウマ、ヤマシマウマの3種に分けられるようだ。シマウマの見分けなんて、素人につくわけがないと思っていたが、調べてみたら意外と縞模様の違いがはっきりしていた。

サバンナシマウマ:お腹の下まで縞が伸びている。

グレービーシマウマ:縞の一本一本が細くて、本数が多い。

ヤマシマウマ:1番の特徴は真上から見た時に腰の位置にはしご模様がある。

天王寺動物園にいるグラントシマウマは、サバンナシマウマの亜種である。亜種の中では、いちばん体が小さいが、それでも体重300kg程になる個体もいるそうだ。

体の縞模様はやはりグレービーシマウマ等より少なく、縞の間も離れている。同じく亜種のチャップマンシマウマが持つ薄いかげ縞*2はほぼ見られない。

グラントシマウマはサバンナシマウマの仲間ということでお腹に下にも縞模様があるだろうか?と思いながら観察していると、偶然にも一頭のシマウマがヘソ天を披露してくれたのでご覧いただきたい。お腹の縞が実によく見えた。最後、私の視線に気づいて慌てたかのように駈け出していくのがかわいらしい。

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この日の大放牧場にはキリン1頭、エラント1頭、グラントシマウマが1頭が展示されていた。園にはグラントシマウマが3頭いるが、この動画の元気いっぱいなシマウマは、(後で撮った写真と公式サイトの写真を比較した感じ)おそらく「チサト」だと思われる。

今は放牧場を駆けまわり堪能しているチサトだが、飼育員の方のブログによると、広島の動物園からやってきた後、1ヶ月以上かけて訓練を重ねても、警戒してなかなか展示場に出られなかったそうだ。 

このような光景が見られるのも飼育員の皆さんとチサトのがんばりの賜物だと思うと、この日初めて訪れたくせに勝手に感慨深くなる。

「ハズバンダリートレーニング」を行うシマウマのチサト

チサトはエランドのミナミと共に「ハズバンダリートレーニング」という取り組みに参加しているそうだ。これは動物たちの協力のもとで健康管理を行う手法で、従来は麻酔をして行っていた採血や治療などを動物のストレスを最小限に抑えながら実施するもの。例えば柵越しの獣医さんに、動物が自分で血管を差し出して採血をしたりするのである。

すでにチサトは前脚を板の上に乗せてやすりで蹄を削ることができるようになっているそうだ。昨年の夏の情報なので、今はもっといろいろできるようになっているかもしれない。

教育施設としての動物園

アフリカサバンナゾーンに限らず、全体を通して強く印象に残ったのは、天王寺動物園が単なるアミューズメント施設ではなく、教育施設であることを明確に打ち出している点だった。

園内に設置された「TENNOJI ZOO MUSEUM」では、動物の骨格標本や剥製標本を用いた展示に加え、「動物園の役割とは何か?」という根本的な問いへの答えが示されていた。

グラントシマウマの骨格標本と解説。私が好きなウマの歯の説明もあった

私は毎週見る機会があるけど、一般的には蹄の裏側はあまり見ないと思うのでいい展示だなと思った

また、今回訪問したタイミングでは、アジアの熱帯雨林など、まるっと工事中のエリアがあった。きっと、工事が終わるとこれらエリアも生態展示中心の、動物福祉が重視された展示スペースになるのではないかと思う。完成が楽しみだ。

 

*1:違う種類の動物間のトラブルなどの懸念はあるが

*2:白い縞の上に薄っすら茶色っぽい縞が入っている