
詳しくは、前回の投稿をお読みいただけるとありがたいのだが、古墳時代の馬具や馬形埴輪を調べるうちに「自分でも形にしてみたい」と思い立った。
勉強不足で恥ずかしいが、写真や展示で見る埴輪はどこか素朴で可愛らしく、古墳の主に統治されていた農民がつくっていたものなのかと勝手に思っていた。
けれど調べると、古墳時代には埴輪専門の職人がいたという。実際に手を動かしてみると、その理由がとてもよくわかった。これは多分、農業しながら片手間でたくさんは作れない。
粘土は思った以上に気まぐれだった
まず、粘土の扱いが想像以上に難しかった。私が今回使った粘土は「オーブン粘土」というもの。家庭用で簡単に焼き物ができるようにつくられた、練らなくても使える進化した粘土である。だから古墳時代の粘土とはきっとぜんぜん違うものなのだけれど、それでも扱いにはかなり苦戦した。
乾燥が早く、すぐヒビが入る。作業した日は雨で蒸し暑かったが、除湿を入れると一気に乾いてしまい、汗だくで粘土と格闘した。そう考えると、湿度の高い日本は陶芸向きの気候なのかもしれない。
そんなわけで、今回はこのミニチュア馬形埴輪の作り方(※自己流です)をお届けしたい。ものすごく需要がなさそうだけれど、そういったところを取り上げるのがUMANICLEの醍醐味でもある。
とても長いが、もしかしたら、お子さんの夏休みの自由研究になる可能性もあるかもしれない、ということでやや細かく記載する。(まあ、夏が終わったばっかりだけど)
※本当に長いので、考察だけ読みたい方は目次で最後の【完成】まで飛んでください。
- 粘土は思った以上に気まぐれだった
- 【手順1】オーブン粘土と道具を準備
- 【手順2】粘土を半分にわけ、馬形埴輪の生命線「ドベ」をつくる
- 【手順3】中を空洞にした胴体をつくる
- 【手順4】蓋をして繋ぎ目を滑らかに整える
- 【手順5】空気穴を開けて、厚すぎる部分をヘラで切り落とす
- 【手順6】首のパーツを胴体に接着する
- 【手順7】首と頭の形を整えてタテガミをつける
- 【手順8】泥障(あおり)と足をつける
- 【手順9】結ったタテガミと目の穴をつくる
- 【手順10】鞍の前橋と後橋を接着し、尾をつける
- 【手順11】馬具や装飾をつける
- 【手順12】7日ほど乾燥させる
- 【手順13】乾燥が終わったら、オーブンで焼く
- 【完成】まだらになりつつ、なんとか形になった
【手順1】オーブン粘土と道具を準備

今回使用したのはヤコのオーブン粘土(400g)というもの。初めて使った。そのほか、粘土シート(粘土板)とヘラ各種、焼き鳥用の串、使い捨てふきん(不織布)をSeriaで購入。
【手順2】粘土を半分にわけ、馬形埴輪の生命線「ドベ」をつくる

粘土をひとまず半分にわけた。すぐ乾くので、使わない分は濡らした不織布に包む。

ドベは粘土を水で溶いた接着剤のようなもので、パーツをつける時に使う。小学校の焼き物クラブで(ドベ)習った記憶がよみがえった。
なお、つくっていくうちにわかることだが、たくさんのパーツを接着しなければならない馬形埴輪の生命線はドベである。
【手順3】中を空洞にした胴体をつくる

ここが最初の難関。濡らした不織布を芯にして包み、乾燥を防ぎながら成形。
本物の埴輪も中は空洞だ。胴体をつくりながら、本物の埴輪は「紐づくり」だったかもしれないと思った。根拠はないのだが、その方がつくりやすそうだと感じた。

不織布を抜いた後に表面を整え、厚みをできるだけ均一にする。
【手順4】蓋をして繋ぎ目を滑らかに整える

口の部分を粘土でふさぎ、指でなめらかに整える。

ここまでの時点でかなり疲弊した。3~4時間はかかる作業なので体にあった高さの机で作業することをおすすめする。私はちゃぶ台でつくったため次の日も腰が痛かった。
【手順5】空気穴を開けて、厚すぎる部分をヘラで切り落とす

本物の馬形埴輪はお尻などに穴が開いている。お尻の穴を見たときは肛門を再現したのかと思ったが、調べてみると焼成中の割れ防止だそうだ。ということで、同様にいくつか穴を開けた。

竹串で穴を開ける際、馬のお尻部分の粘土が他の部分より厚すぎることに気がづいた。後でヘラを使って厚い部分を切り落とし、調整した。
【手順6】首のパーツを胴体に接着する

首と胴体の接着面に竹串で傷をつけ、ドベを挟んで貼り合わせる。傷を入れるとしっかりつく、というのは小学校で習った気がする。
【手順7】首と頭の形を整えてタテガミをつける

同様に、傷をつけてドベで接着。タテガミも同じ方法でつける。タテガミの毛は竹串で描いたが、乾燥しているとうまく描けないので、湿らせてからやるとよい。
【手順8】泥障(あおり)と足をつける

背中から腹にかけて泥障をつける。できるだけ薄く伸ばした粘土を乗せ、境目がわかりやすいように竹串を使って整えた。足は胴体の重みで少し潰れるため、やや長めに用意するのがおすすめ。

本物の馬形埴輪を見ると、足の後ろの窪みが粘土をカットする形で表現されていた。それを真似しようとしたが、ミニチュアだと細かい作業になり、かなり難しい。結果、なんだか汚くなってしまった。

またドベを活用し、胴体と4本の足を接着する。切り込みを入れた方を後ろ側にするのを忘れずに。
【手順9】結ったタテガミと目の穴をつくる

ツノのように見えるのは結ったタテガミである。なんだが惨く見えるが目は竹串を貫通させてつくった。ひと思いにいったら少し左右の高さが変わってしまった。
【手順10】鞍の前橋と後橋を接着し、尾をつける

鞍の前橋と後橋をつくる。写真は横から撮ったものだが、製作の際は正面からチェックして左右対称か確認しながら接着しないと失敗する。
尻尾は当時、断尾されることも多かったらしく、その形を参考にしたが角度を整えるのに苦戦した。
【手順11】馬具や装飾をつける

顔には耳や頭絡などをつける。本物の馬形埴輪は、紐の部分を薄く伸ばした粘土でカットしていて太さが均一で美しい。しかしミニチュアでは粘土がポロポロと崩れてしまい、途中で諦めざるを得なかった。耳も本物はきちんと穴が開いているが、再現できなかった。
胸元には胸懸と馬鐸をつけたが、かなりデフォルメした形になってしまった。前橋のそばには円形の鐙もつけた。

尻尾のまわりには尻懸という鞍を固定するための紐と杏葉とよばれる鈴をつけた。
【手順12】7日ほど乾燥させる

本当は東京国立博物館の平成館で見た馬形埴輪そっくりにつくりたかったのだが、気づけばずんぐりむっくりになってしまった。しかし、これが私の力量の限界である。この状態で7日ほど乾燥させてから、焼くことにした。
【手順13】乾燥が終わったら、オーブンで焼く

180度に予熱したオーブンで40分ほど焼く。我が家ではオーブン機能を使った手の込んだ料理をしないため、食べ物を焼いたことがなかった。オーブンにとって初めての焼き物が埴輪だったのは驚きだったに違いない。
【完成】まだらになりつつ、なんとか形になった

色むらはあるが、なんとか完成。
実際につくってみてわかったのは、埴輪づくりが想像以上に繊細で、体力と集中力のいる仕事だということだ。粘土は気まぐれで、乾燥や割れと常に隣り合わせ。形を整えるのも難しい。それでも、古墳時代の職人たちは粘土と向き合いながら、埴輪をつくり続けていた。
本物の馬形埴輪は多くは不思議な造形の均衡を保っている。装飾は華美ではなく、かといって単純でもない。でも当時の馬が飾られていて権力の象徴であったことはよく伝わる…という絶妙なラインを攻めている。
埴輪は祭祀や葬送のための道具であり、ある程度の数を効率よく生産しなければならなかった。さらに、馬具の装飾は複雑で、粘土で細かにに表現するのはミニチュアでなくとも非常に難しい。
リアルさを追えば壊れやすく、単純にすれば意味が伝わらない。
その中で職人たちは、形の省略と象徴のバランスを取りながら、最も安定した“美しいかたち”を探っていたのではないだろうか。
結果として生まれたあの馬形埴輪のフォルムは、機能と美意識、技術の折り合いの結晶だったのかもしれない。現代の感覚からすると可愛らしさと格好よさ、そのどちらにも偏らない「ちょうどいい形」。それが、古墳時代の職人たちがたどりついた答えなのかもしれない。
※これは私がミニチュア埴輪製作をしてみて、感じたことを素直に述べたものであり、根拠があるものではありません。